お寿司を食べる際、醤油の付け方に迷った経験はないでしょうか。お寿司と醤油には深い関係があり、正しい付け方を知ることで、職人が握った寿司の味をより深く楽しむことができます。特に初めて訪れる寿司店や、接待などの大切な場面では、スマートな所作が求められることもあります。
この記事では、お寿司における醤油の正しい付け方から、醤油を使わない寿司の種類、さらには家庭でも楽しめる本格的な醤油の作り方まで詳しく解説します。寿司と醤油の奥深い世界について、ぜひ最後までご覧ください。
お寿司の醤油の付け方は?基本のマナー

お寿司を食べる際の醤油の付け方には、味を損なわないための基本的なルールがあります。寿司職人が心を込めて握った一貫をおいしく味わうために、醤油の付け方のマナーを理解しておきましょう。
醤油はネタ側につけるのが基本
お寿司に醤油をつける際は、シャリではなく、ネタ側に少量つけるのが基本です。
シャリに醤油をつけてしまうと、酢飯が醤油を吸いすぎて、本来の酸味や甘みのバランスが崩れたり、ネタの繊細な味わいが醤油の強い塩味で隠れてしまったりする可能性があります。
また、醤油を吸ったシャリがほぐれやすくなり、箸や指から崩れ落ちて食べにくくなることもあります。特に、口の中でほろりとほどけるように計算されて握られた寿司の場合、この点は非常に重要です。
ネタ側に醤油をつけることで、魚介類本来の旨味と醤油の風味が口の中で絶妙に調和し、寿司の味わいを最大限に引き出すことができるのです。醤油の量は、ネタの先端に軽く触れる程度で十分であり、醤油皿に寿司全体を浸すような付け方は避けましょう。
手で食べる場合の醤油の付け方
寿司を手で食べる場合の醤油の付け方には、いくつかのコツがあります。
まず、親指と人差し指、中指の3本の指を使って寿司を優しく挟みます。このとき、シャリ部分を強く握りすぎないよう注意が必要です。次に、寿司を横に傾けるか、軽くひっくり返すようにして、ネタの端を醤油皿に近づけましょう。
醤油をつける際には、ネタの先端部分だけを醤油に軽く触れさせ、醤油皿の中で寿司を転がしたり、長時間浸したりしないようにしましょう。醤油をつけた後は、そのままネタが舌に触れるように口へ運びます。こうすることで、ネタの風味と温度を舌で直接感じ取ることができ、より豊かな味わいを楽しめます。
箸で食べる場合の醤油の付け方
現代では、箸を使って寿司を食べることも一般的になっており、マナー違反ではありません。
箸で寿司を持つ際は、ネタとシャリの境目あたりを優しく挟むようにします。力を入れすぎると寿司が崩れてしまうため、軽く支える程度の力加減が大切です。醤油をつける際は、寿司を横向きにして、ネタ側を下にして醤油皿に近づけるとよいでしょう。
寿司を縦に立てたり、シャリを箸で強く挟んだりすると、米粒がばらけてしまう恐れがあるので注意します。また、醤油をつけた後、皿の上で寿司を振って余分な醤油を落とすのは避けましょう。
醤油皿の使い方のマナー
醤油皿の使い方にも、知っておくべきマナーがあります。
醤油を注ぐ量は、皿の底が薄く覆われる程度が適量です。醤油皿いっぱいに注いでしまうと、寿司を浸しすぎてしまう原因となり、また、見た目にも品がありません。食事の途中で醤油が足りなくなったら、少量ずつ追加するようにしましょう。
また、わさびを醤油皿の中で溶かすのは、わさび本来の香りが飛んでしまうため避けるのがマナーです。多くの寿司店ではすでにネタとシャリの間に適量のわさびが入っていますが、好みで追加したい場合は、ネタの上に少量乗せて風味を楽しみましょう。付ける際には、醤油皿を手に持って寿司に近づけるのではなく、寿司を醤油皿に運ぶようにしましょう。
お寿司で醤油をつけない場合とその理由

すべての寿司に醤油をつける必要はありません。すでに味付けを施している場合や、素材の味を活かすために醤油を使わない寿司も多く存在します。醤油をつけない場合やその理由について、具体的に見ていきましょう。
すでにツメやタレがついている寿司
煮アナゴ、ウナギなど、表面に甘辛い「ツメ」と呼ばれるタレが塗られている寿司は、醤油をつけずにそのまま食べます。ツメがついている寿司は、煮アナゴやウナギのほか、煮ハマグリ、煮イカなどが代表的です。
ツメは、醤油、砂糖、みりん、酒などを煮詰めて作られる特製のタレで、それぞれの店独自の配合があります。職人が長年の経験から編み出した絶妙な甘さと塩加減は、ネタの味を最大限に引き立てるよう計算されています。
塩や柑橘類で仕上げられた寿司
白身魚やイカなどの繊細な味わいを持つネタは、醤油ではなく塩や柑橘類で味付けされて提供されることがあります。
塩で仕上げられた寿司は、素材そのものの甘みや旨味を際立たせているのが特徴です。岩塩や藻塩など、使用する塩の種類によっても味わいが変化し、職人のこだわりが感じられる一品になります。ヒラメ、タイなどの淡白なネタは、塩との相性が良いとされています。スダチやカボスといった柑橘類が添えられている場合も、醤油はつけずにその風味を楽しみましょう。
職人が「そのままで」と勧める寿司
カウンター席で職人と対話しながら食事を楽しむ際、職人から「そのままでどうぞ」とすすめられることがあります。
この場合、職人はすでにネタに適した味付けを施しているか、素材本来の味を楽しんでほしいと考えています。煮切り醤油を刷毛で塗ったり、隠し包丁を入れて味を染み込ませたりと、見た目にはわからない工夫が施されていることも少なくありません。
このような場合は、醤油を付けずにそのまま味わうことがおすすめです。ネタそのものの味わいや季節や気温に合わせた味付けの調整、店独自の味わいを楽しめるかもしれません。
お寿司の醤油以外の調味料と楽しみ方

寿司の楽しみ方は、醤油だけにとどまりません。現代では、ネタの個性を引き出すさまざまな調味料が使われています。
- 岩塩
素材の味をシンプルに引き立てる。白身魚やイカ、貝類におすすめ。
- ポン酢
柑橘のさわやかな酸味が特徴。ブリ、サバなど脂の乗ったネタをさっぱりとさせる。
- オリーブオイル
マグロやホタテと合わせると風味豊かな地中海風の味わい。わさびと組み合わせることで、風味がまろやかになる効果も。
- ごま油と塩
香ばしいごま油の風味と塩味が食欲をそそる。炙り寿司全般におすすめ。
ネタに合わせて調味料を変えることで、新しいお寿司の魅力に出会えるかもしれません。
お寿司におすすめの醤油と作り方

寿司に使う醤油にこだわることで、家庭でもワンランク上の寿司体験を楽しむことができます。市販の醤油を選ぶ際のポイントや、プロの技術を取り入れた自家製醤油の作り方を紹介します。
お寿司に合うおすすめの市販醤油
寿司に使う醤油は、素材の味を引き立てながらも、主張しすぎないものを選ぶことが重要です。一般的な濃口醤油も使えますが、寿司専用に開発された醤油や、特別な製法で作られた醤油を使うことで、より深い味わいを楽しめます。
旨味の強い「再仕込醤油」
再仕込醤油は、一度醤油を仕込んだ後、その醤油を使って再度仕込むという贅沢な製法で作られています。
通常の醤油と比べて、旨味成分が約2倍含まれており、濃厚でコクのある味わいが特徴です。色も濃く、とろみがあるため、少量でもしっかりとした味を感じることができます。山口県や九州地方で多く生産されており、「甘露醤油」とも呼ばれています。
塩分がまろやかな「甘口醤油」
甘口醤油は、九州や北陸地方で親しまれている、塩分控えめで甘みのある醤油です。刺身醤油として販売されていることもあります。
通常の濃口醤油と比べて塩分濃度が低く、代わりに糖分やアミノ酸が多く含まれているのが特徴です。まろやかな味わいが特徴で、素材の味を優しく包み込むような使い心地があります。
ひと手間で本格的に!「煮切り醤油」の作り方
煮切り醤油は、醤油に日本酒とみりんを加えて煮詰めた、寿司店で実際に使われている本格的な醤油です。アルコールを飛ばすことで、まろやかさが増し、角の取れた上品な味わいになります。
| 【野本流『万能!煮切り醤油』のレシピ】 材料(作りやすい分量)しょうゆ……120mlみりん……30ml日本酒……30ml削り節……ひとつまみ 作り方小鍋にみりん、酒を入れてひと煮立ちさせてアルコールをとばす。しょうゆを加えてひと煮立ちさせ、削り節を加えて火を止める。10分ほどおいて、こし器などでこす。粗熱が取れたら清潔なびんや保存容器に入れる。※冷蔵庫で半年ほど保存可能 |
引用元:プロの寿司屋直伝・万能『煮切り醤油』のと黄金比|漬け丼・卵かけご飯に | 予約のとれない寿司屋三代目 野本やすゆきの今日のごはんは“サカナ”かな | オレンジページnet
まろやかでコクのある煮切り醤油は、寿司にはもちろん、漬けや卵かけご飯にもおすすめです。
お寿司の醤油に関するよくある質問(FAQ)

お寿司と醤油について、多くの方が疑問に思う点をまとめました。これらの知識を身につけて、より深い寿司文化を楽しんでみてください。
なぜシャリではなくネタに醤油をつける?
シャリに醤油をつけないのには、味覚的にも物理的にも重要な理由があります。
まず、シャリが醤油を吸いすぎると、職人が計算した酢飯の味のバランスが崩れてしまう恐れがあります。酢飯には、米酢、砂糖、塩が絶妙な配合で混ぜられており、この味わいは寿司の土台とも言える重要な要素です。醤油が染み込むことで、せっかくの酢飯の風味が台無しになってしまうのです。
そして、醤油を吸ったシャリは崩れやすくなるというデメリットもあります。職人が握った寿司は、口の中でほどける絶妙な握り加減になっていますが、醤油で濡れたシャリは構造が弱くなり、箸や指で持った瞬間にばらけてしまう可能性があるのです。
また、ネタ側に醤油をつけることで、舌に最初に触れるのがネタの味となり、魚介類の旨味を直接感じることができるという意味もあります。これは味覚の観点から理にかなっており、寿司の味わいを最大限に楽しむための食べ方といえるでしょう。
軍艦巻きの醤油の付け方は?
軍艦巻きは、海苔でシャリを囲み、上にウニやイクラなどをのせた寿司で、通常の握り寿司とは異なる醤油の付け方が必要です。
一般的な方法は、ガリ(甘酢生姜)を使う方法です。ガリに少量の醤油をつけ、それを軍艦巻きのネタの上に軽く塗るように付けることで、ネタがこぼれる心配もなく、適量の醤油をつけられます。
また、添えられているきゅうりを使う方法もあります。きゅうりの切り口に醤油をつけ、それをネタの上に軽く押し当てるようにして醤油を移しましょう。きゅうりの爽やかな香りも加わり、さっぱりとした味わいになる利点もあります。
寿司屋で醤油を「ムラサキ」と呼ぶことがあるのはなぜ?
寿司店では、醤油のことを「ムラサキ」と呼ぶ隠語が使われることがあります。
この呼び名の由来には諸説ありますが、一つには、醤油の色が紫色に見えることからという説があります。良質な醤油を光に透かして見ると、黒ではなく深い紫色に見えることがあり、これが名前の由来とされているのです。
また、醤油は江戸時代初期には贅沢品で、一般庶民には手の届かない調味料でした。江戸時代には紫色が高貴な色とされており、当時高価だった醤油を、高貴な色である紫にたとえたという説もあります。
お寿司の醤油を理解して、さらにおいしく味わおう

お寿司と醤油の関係について、基本的なマナーから応用的な知識まで解説してきました。醤油の付け方ひとつで、寿司の味わいは大きく変わります。
ネタに少量の醤油をつけるという基本を守ることで、職人が握った寿司本来の味を楽しむことができます。また、すでに味付けがされている寿司は、そのまま食べることで、職人の技術と心遣いを感じることができるでしょう。
醤油以外の調味料を使い分けたり、自宅で煮切り醤油を作ったりすることで、寿司の楽しみ方はさらに広がります。市販の醤油を選ぶ際も、ネタとの相性を考えて選ぶことで、より豊かな食体験となるはずです。
この記事を参考に、基本的なマナーを理解したうえで、ぜひ自分なりの楽しみ方を見つけてみてください。これまでとは違った寿司の魅力に出会えるきっかけとなれば幸いです。

