江戸時代から日本人に親しまれてきた寿司。昔は手でつまんで食べるのが主流でしたが、「お寿司を手で食べるのはマナー違反では?」と不安に思う人もいるかもしれません。
とくに高級寿司店を訪れる予定がある場合は、正しい食べ方やマナーが気になるもの。この記事では、お寿司の種類別に、手で食べるときのポイントや注意点をわかりやすく解説します。
お寿司を手で食べるのはマナー違反?

食べ物を手で食べることは、なんとなく行儀が悪いイメージを持つ人も多いでしょう。しかし、お寿司の場合は手で食べることはマナー違反ではありません。これは回転寿司でも高級寿司店でも同様です。
ここでは、お寿司を手でたべても良い理由や箸との使い分けについて、詳しく見ていきましょう。
お寿司を手で食べるのがOKな理由
酢飯で作る今の握り寿司のスタイルになったのは、江戸時代後期頃といわれています。当時の握り寿司は今の約2〜5倍ほど大きく、箸では食べづらいものでした。加えて、江戸時代のお寿司は屋台で提供されるファーストフードのような位置づけだったため、みんな立ったまま手でつまんでサッと食べていたのです。
こうした歴史もあり、お寿司は手で食べるものとして定着しました。現在のお寿司は小さく掴みやすくなりましたが、手で食べてもシャリが崩れにくいよう計算して握られていることも多く、手で食べるスタイルも引き続き広く受け入れられています。高級寿司店でも、自信を持って手で食べて問題ありません。
手と箸の使い分け
結論、手でも箸でもどちらでも大丈夫です。握り寿司は手で食べるほうが食べやすいですが、箸にも手が汚れない、手の温度がネタに伝わらないので鮮度を保って食べられるといったメリットがあります。
寿司ネタや種類、その場の状況などに合わせて自分の食べやすい食べ方を選びましょう。もし、どちらで食べるべきか迷った場合は、職人の握った形を崩さず、ネタとシャリの一体感をより直接的に感じやすい手で食べるのが無難かもしれません。
お寿司を手で食べるときのマナーと所作

手で食べるといっても、ただ指でつまんで好きに食べてよいというものではありません。以下でお寿司の正しい持ち方や醤油のつけ方をチェックし、正しいマナーと所作を身につけましょう。
お寿司の正しい持ち方
ネタとシャリが一体となったお寿司は、職人の繊細な技の結晶です。そのバランスを崩さず、丁寧にいただくことがマナーの基本といえるでしょう。お寿司の基本の持ち方と手順は以下の通りです。
- おしぼりで手を拭き、清潔な状態にする
- 親指・人差し指・中指でお寿司を軽くつまむ
- お寿司を横に寝かせる
お寿司をつまむときは、指先だけで優しくつまむことで見た目もよく、品のある美しい所作として映ります。
醤油のつけ方とマナー
醤油をつけるときは、ネタにだけつけるのがマナーです。シャリ側に醤油をつけると、醤油を吸ってしまい米が変色するほか、シャリ自体が崩れてしまうことがあります。
醤油をつけるときは、横に倒したお寿司のネタ側に醤油を軽くつけましょう。このとき、醤油をつけすぎるとネタ本来の風味を損ねてしまうので、醤油は少量で十分です。
また、店やネタの種類によっては、あらかじめネタに醤油や煮ツメがつけられているものがあります。その場合は、醤油をつけずにそのまま食べましょう。
もし醤油をつけていいか迷ったら、職人に聞いてしまって構いません。お寿司をベストな状態で食べるためにも、遠慮せずに確認することが大切です。
【寿司別】手で食べる食べ方のポイント

お寿司と一口に言っても、その形や構造はさまざまです。手で食べる際には、それぞれの種類に合った食べ方を知っておくと、よりスマートにいただくことができます。
ここでは、握り寿司・軍艦巻き・細巻きの3タイプのお寿司の食べ方のポイントを、それぞれ詳しくチェックしてみましょう。
握り寿司の場合
握り寿司を手で食べるポイントは、次の3つです。
- ネタを下にして食べる
先述の通り、握り寿司は醤油をネタ側につけるのがマナー。さらに、下にして食べることでネタが直接舌に触れるため、素材の風味や味わいをより深く感じられます。
- 噛み切らずに食べる
お寿司は一口で食べ切るのが基本です。職人が技術を詰め込んで握ったお寿司は、ネタとシャリの一体感が命。そのバランスを崩さずにいただくことが、職人への敬意にもつながります。噛み切ってしまうとシャリが崩れて見た目も悪くなってしまうので、一口で食べ切るようにしましょう。
- ネタとシャリを分けない
醤油はネタ側につけるのが正しい作法ですが、醤油をつけるためにネタをはがし、またシャリの上に戻して食べるのはマナー違反です。握りを崩すのは行儀が悪く、職人に対しても失礼な行為のため、控えましょう。
軍艦巻きの場合
軍艦巻きは、ネタをシャリの上にのせ、海苔で巻いて固定するという独特の形状をしています。とくにイクラやウニなどは、ネタ側を下にすると具材がこぼれてしまうため、醤油のつけ方に工夫が必要です。
スマートに食べるには、醤油はつけるのではなく垂らすのが基本。軍艦巻きに添えてあるきゅうりなどに醤油を染み込ませ、ネタに垂らしていただきます。
添え物がない場合はガリを使いますが、ガリを手づかみするのはNGです。ガリは箸でつまんで醤油をつけ、ネタに垂らすようにしましょう。
食べるときは海苔の巻かれた部分を軽くつまみ、海苔がふやける前に食べ切ります。
巻き寿司の場合
細巻きは具材を海苔とシャリで巻いた形状のため、ネタ側にのみシャリをつけるのは至難の業です。食べるときはシャリとネタの境目あたりを意識して醤油をつけましょう。巻物の場合は、海苔に醤油をつけてしまっても問題ありません。
ただし醤油をつけすぎてしまうと、シャリが水っぽくなり細巻きが崩れてしまうので要注意です。
また、細巻きを手で食べると海苔などで指先が汚れやすくなります。次に食べるお寿司に影響を与えてしまうこともあるため、汚れたらおしぼりで拭き取り、清潔を保ちましょう。
お寿司を手で食べるときの注意点

お寿司を手で食べることは、日本の伝統に根ざした自然なスタイルですが、いくつか注意点があります。より美しく、上品な振る舞いができるよう、所作に気を配りましょう。
とくに気をつけたいポイントは以下の4つです。
- 一貫は一口で食べる
- 衛生面に配慮する
- ガリは箸休め程度に食べる
- 醤油をつけすぎない
具体的な内容を、それぞれチェックしていきましょう。
一貫は一口で食べる
お寿司本来の旨みを存分に味わうなら、一貫を一口で食べ切ることが鉄則。高級寿司店のお寿司はどれも、シャリとネタのバランスを考えて作られています。この技術を尊重する意味でも、お寿司は噛み切らずに一口でいただきましょう。
もし一口で食べ切るのが難しい場合でも、食べかけのお寿司を皿に戻すのはNGです。残りのお寿司は手に持ったまま、素早く食べ切りましょう。一口で食べきれないと感じたら、注文する際に伝えることで、シャリを小さめに握ってもらうなどの配慮をしてもらえます。
衛生面に配慮する
手で寿司を食べる際には、清潔な手であることが大前提です。食事の前にはおしぼりを活用し、手をきちんと拭いてからいただきましょう。
ただし、うっかり醤油をこぼしてしまったときなど、テーブルの汚れをおしぼりで拭くのは好ましくありません。タオル地のおしぼりの場合、染みがつくと店側に負担がかかる可能性があります。カウンターを汚してしまった場合は、職人に申し出て対応をお願いしましょう。
また、高級寿司店では、お寿司を食べる空間や雰囲気も大切にしています。とくに派手なネイルは、清潔感に欠ける印象を与えてしまう場合があるので注意が必要です。
加えて、タバコや香水、においの強い整髪料は控えるなど、自身の香りにも気を配りましょう。お寿司は五感で楽しむものです。衛生面を配慮し、見た目やにおいなどが周囲の客の食事の邪魔をしないように気をつけましょう。
ガリは箸休め程度に食べる
ガリとは、お寿司とともに提供される生姜の甘酢漬けのことで、箸を使って食べるのがマナーです。ガリは単なる付け合わせではなく、さまざまな役割を持っています。
- 魚の生臭さを消す
- 口の中をさっぱりさせる
- 殺菌作用で食中毒を予防する
とくに脂の乗ったネタを食べた後にガリを食べると、口の中がリセットされて前のネタに邪魔されることなく次のネタを味わえます。
しかし、あくまでガリは箸休めとして食べるのがマナー。食べすぎると逆に甘酢の風味が強く残り、次に食べるネタの香りや風味が損なわれてしまいます。ガリは数枚をサッと口に含む程度にとどめ、寿司本来の味を引き立てる名脇役として活用しましょう。
醤油をつけすぎない
醤油はあくまでお寿司のアクセント。つけすぎてしまうと醤油の味しかしなくなり、繊細なネタの風味や職人が丁寧に整えた味のバランスが台無しになってしまいます。
シャリに醤油が染み込むと形が崩れやすく、見た目も損なわれますので、基本はネタの表面にほんの少しだけつけるだけで十分です。
また、シャリが崩れて米が混ざった醤油皿は、見た目も美しくありません。醤油はあくまで補助的な味付けと考え、寿司本来の味を引き立てる役目として使うことが大切です。
手で食べるお寿司のマナーQ&A

お寿司を手で食べることに慣れていない人にとっては、「これで正しいのだろうか?」と不安に感じる場面も多いかもしれません。実際、寿司に関するマナーには明確な正解があるようでいて、意外と柔軟な部分もあります。
ここでは、お寿司を食べるときに疑問に感じやすいポイントをQ&A形式でまとめました。安心して寿司を楽しむためのヒントとしてお役立てください。
お寿司を食べる順番は?
お寿司を食べる順番に厳格なルールはありませんが、味や香りの移ろいを楽しむうえでは、ある程度の流れを意識すると食事の満足度が高まります。一般的には淡白な味わいのネタから始め、徐々に風味の強いものへ進むのが通例です。
- 序盤:タイ・ヒラメなどの白身魚
- 中盤:マグロ・カツオなどの赤身魚、アジ・サバなどの光り物
- 終盤:ホタテ・アワビなどの濃厚な貝類、ウニ・イクラ・アナゴのような脂や香りの濃いネタ
- 締め:玉子焼きや巻物など
- 箸休め:ガリやお茶
あくまでこれは一例なので、食べたいネタが決まっている場合はあまり順番にこだわりすぎず、自分のペースで楽しむのも一つの醍醐味です。ただし、一皿盛で提供された場合は、左から順に食べ進めるのがマナーとなります。
醤油をつけないほうがいい寿司はある?
寿司屋では、すべてのネタに醤油をつける必要はありません。とくに高級寿司店では、職人があらかじめ煮切り醤油や塩、ポン酢などで適切な味つけを施してから提供されることが多く、その場合は醤油をつけずにいただくのがベターです。
提供時に「そのままでお召し上がりください」と案内された寿司は、迷わずそのまま口に運びましょう。もし味つけされているかわからない場合は、遠慮せずに職人に聞くことをおすすめします。
自己判断で醤油を足して、せっかくの風味や味つけが台無しになってしまっては本末転倒。こうした声かけは失礼にはあたらないため、しっかり確認をして、適切な食べ方でひと手間に込められた思いを大切に味わいたいものです。
女性が寿司を手で食べるのはおかしい?
基本的に女性がお寿司を手で食べても、なにも問題ありません。お寿司はもともと手で食べることを前提として生まれた料理であり、男女問わず手でつまんで自由に楽しめるスタイルです。
もちろん箸で食べても大丈夫ですが、年配の方との会食や高級寿司店で食事をする場合は、むしろ手で食べることが推奨されます。
ただし、手で食べるときに気をつけたいのが、清潔感があるかどうか。女性の場合、華美なネイルや指輪をつけていると、手で食べるときの妨げになり、衛生的にもよろしくありません。爪を整え、アクセサリー類はあらかじめ外しておくと好印象です。
お寿司を手で食べるときは、所作に清潔感と落ち着きがあること、おしぼりでこまめに手を拭くなど衛生を保つことを意識しましょう。
お寿司を手で食べるのは粋な食べ方!職人への敬意も忘れずに

お寿司を手で食べることは、伝統に根ざした自然なスタイルであり、決してマナー違反ではありません。むしろ、丁寧な所作とともにいただくことで、寿司本来の味わいや職人の技をより深く楽しむことができます。清潔感や周囲への配慮を忘れずに、美しく味わう姿勢こそが、粋な大人の食べ方といえるでしょう。
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